
事業計画書をより魅力的にするには、どのようなスライドを作成していくべきか
一つ前の記事「投資家に絶賛される事業計画書の書き方①:目的・内容編」では、事業計画書の目的や盛り込むべき内容を中心にご説明しました。まだ、「【最新版】経営陣や投資家に絶賛される事業計画書の書き方①:目的・内容」を読んでない方は是非読んでから、こちらの記事をお読みいただけると、より各スライドの必要性がイメージがわくかと思います。
それでは、具体的に上記の各目次に沿って、どのようなスライドを作成していくべきかを上場企業・非常上場企業の公開資料を用いながら解説していきたいと思います。おさらいですが、事業計画書の目次とストーリーは下記でした。
ミッション・実現したい世界観:
自分たちはこんな感じのすばらしい世界・社会をつくりたいんですよね
顧客が抱える課題・ペイン:
だけどいまは、こういう人が、こんなことにいまも悩み苦しんでいるため、
理想の世界には程遠いんです
ペインに対するアプローチ(提供価値の内容、価値提供の仕組み)・サービス/プロダクト概要:
しかし、なんと、そんなひとたちの悩みは今回自分たちが頑張って開発した画期的なサービス・プロダクトによって、解決できるんです(解決できそうです)
収益モデル(≒儲けの仕組み、事業構造図):
それは儲けも生んでおり、ビジネスとしてしっかり成り立っています
トラクション(実績):
いまはこれだけの人に使われていて、日々その数は爆発的に伸びているので、成長間違いなしです
TAM/SAM/SOM(≒市場規模):
最終的にはこれだけの市場を獲得できうるほどに、自分たちが行なっている事業は将来性にあふれています
競合状況・ポジショニング・競争優位性:
蛇足かもですが、競合と比べたときにも、こんなに自分たちの事業は際立っているので、顧客から今後も選択され続けるでしょう
コスト構造・貸借対照表・キャッシュフロー状況
ちなみに、コスト構造、BS・CFとしてはこんな感じなので、かなり健全です
事業戦略:
事業はイケてるのはお分かりいただけと思うので、もっと成長するために、これからこんな感じで攻めていきたいんですよね
3ヵ年計画:
それによって、今後これだけの収益が生まれるのは目に見えてます
必要リソース量:
しかし、それをやるにはこれだけのお金が必要なので、投資してくれませんか
組織体制・主要メンバー・会社概要:
ちなみに、自分たちはこういう魅力的なメンバーで会社運営しているのでよろしくお願いです
私はこれまでに外資系コンサルタントやフリーランスの経営コンサルタントとして、大企業~中小企業~スタートアップに至るまで、すべてのフェーズの企業を支援してきました。そこで、事業計画書作成を実際に手がけたり、事業計画書の書き方のコンサルティングを行なってきました。
より魅力的に映るような事業計画書作成のコツであったり、皆さまが実際につまづく箇所を熟知しておりますので、是非安心して当記事を読んでいただけたらと思います。事業計画書にとどまらず、企画人材の根本スキルである「企画書・提案書作成の考え方・実務」と「資料作成高速化」を伸ばしたい方には【個人利用】資料作成の実務を販売しております。資料作成力・ロジカルシンキング力を強化していきたい方、資料作成スピードを爆速化させたい方におすすめの内容となっておりますので、是非ご検討ください。
ミッション・実現したい世界観:自分たちはこんな感じのすばらしい世界・社会をつくりたいんですよね
こちらで参考になるのは、下記freee社のスライドです。一言でミッションを示した後に、ナラティブに実現する世界観を説明しています。「スモールビジネスを、世界の主役に。」非常にシンプルでわかりやすいですよね。こちらのように一言でシンプルにミッションが伝わるように磨きあげてください。

出所:freee株式会社「2021年6月期 第4四半期 決算説明資料」
次に、UZABASEのミッションです。「経済情報で、世界を変える」やや抽象度が高く、もう少し具体性が欲しいところですが、説明書きを読むと納得できます。ビジネスパーソンがビジネスの中で活用する経済情報のインフラをつくりだすことで、経済情報の収集やその情報の分析作業を効率化し、生産性を高め、創造性を解放するということ。
そして、世界中のビジネスパーソンがUZABASEの経済情報を基にして、円滑
かつ精度の高い意思決定を行なえる手助けをする。その結果として、そのビジネスパーソンが生み出す社会的インパクトによって、世界を変えるということでしょうか。

出所:UZABASE「2021年第1四半期決算説明資料」
最後に、DeNAです。「一人ひとりに 想像を超えるDelightを」説明書きから、実現したい世界観が伝わってきます。事業領域としてゲーム、ライブストリーミング、エンターテイメント、スポーツ・まち、ヘルスケア、新領域を明示することで、これらの手段を通じて、「一人ひとりに 想像を超えるDelight」を提供し、個々の人生を彩り豊かにするということをわかりやすく示しています。

出所:DeNA「2021年3月期通期 決算説明会」
最後にウェルスナビです。

出所:ウェルスナビ株式会社「成長可能性に関する説明資料」
顧客が抱える課題・ペイン:だけどいまは、こういう人が、こんなことにいまも悩み苦しんでいるため、理想の世界には程遠いんです
次に、顧客が抱える課題・ペインです。こちらに関しては、定量で示せるとよりインパクトがありますが、顧客の生の声等の定性情報でもよいと思います。より生生しい話が出せるとよいと思います。下記はスパイダープラス株式会社の事例となります。建設業界を主戦場とし、建設業界が、「労働時間が全産業と比べ長いことに加え、さらなる人員不足が予測される」という課題をシンプルに2つのチャートで示しています。
①建設業は労働人時間が全産業と比べて長い
②建設業は2000年から2040年の予測にかけて就業者数が減少していき、人手不足化する

出所:スパイダープラス株式会社「FY2021.Q2 決算説明資料」
つぎに、ウェルスナビです。3枚のスライドを用いて、「資産運用の必要性が増大」⇒「しかし、資産運用をやろうにも難しいと思われがち」⇒「結果的に資産運用に資金は投じられず、預貯金として眠ってしまっていて、活かせていない」というストーリーを展開し、日本における資産運用の課題を表現しています。



出所:ウェルスナビ株式会社「成長可能性に関する説明資料」
外資系コンサルタント級の資料の美しさを下記記事でご紹介しておりますので、是非別途ご参照ください。
ペインに対するアプローチ(提供価値の内容、価値提供の仕組み)・サービス/プロダクト概要:しかし、なんと、そんなひとたちの悩みは今回自分たちが頑張って開発した画期的なサービス・プロダクトによって、解決できるんです(解決できそうです)
次にペインに対するアプローチです。こちらは前段で見たペインを、どのように解消しているかをシンプルなサービス・機能紹介スライドで示しましょう。下記はスパイダープラスの事例となります。スパイダープラスは、建設業界が、「労働時間が全産業と比べ長いことに加え、さらなる人員不足が予測される」という課題に対して、建設現場における「膨大な図面・写真・検査記録をクラウドで一元管理する」というクラウドサービスを提供しています。

出所:スパイダープラス株式会社「FY2021.Q2 決算説明資料」
次に、ウェルスナビですが、こちらの課題は「資産運用の必要性が増大」→「しかし、資産運用をやろうにも難しいと思われがち」→「結果的に資産運用に資金は投じられず、預貯金として眠ってしまっていて、活かせていない」というものでした。これに対して、オンラインで簡単に資産運用を行なえるサービスを提供することで、上記課題の解決を図っています。

出所:ウェルスナビ株式会社「成長可能性に関する説明資料」
最後に、Sansanです。こちらは有名ですが、「名刺交換情報が共有されていない」等の課題に対して、機能として名刺をクラウドにアップし、共有し、活用できるというアプローチで解決している様を整理しています。

出所:株式会社Sansan「2021年5月期 通期 決算説明資料」
収益モデル(≒儲けの仕組み、事業構造図):それは儲けも生んでおり、ビジネスとしてしっかり成り立っています
次に、収益モデルです。下記スライドのように、誰に対して、いくらで価値を届けているのかをわかりやすく表現しましょう。こちらのスライドは、スパイダープラス事例となります。「建設工事会社」に、「サブスクリプション型の月額3,000円/ID」でクラウドサービスを提供しています。加えて、クラウドサービスとは別に、エンジニアリング事業として「熱絶縁工事」を建設会社に提供しています。

出所:スパイダープラス株式会社「FY2021.Q2 決算説明資料」
こちらは、ウェルスナビです。サービスの手数料は、「年率1%」とシンプルな収益モデルとなっています。

出所:ウェルスナビ株式会社「成長可能性に関する説明資料」
こちらは、メドレーの事例となります。

